「キヨが慌てて出てくから何事かと思えば……お前ら、実はデキてるとか?」
ニヤッと笑いながら、高野くんがキヨ君の脇腹を肘で小突く。
わ、わたしとキヨ君が……!?
「そんなんじゃねーし」
キヨ君は高野くんをスルリと交わした。
そして、なぜかさっきと同じように悲しげな顔をして見せる。
キヨ君……。
高野くんにからかわれたことよりも、今のキヨ君の表情の方が気になった。
なぜかと聞かれたら、それはわからない。
「ウソつけ。さっき抱き合ってたくせに」
「見間違いだろ」
「はぁ? なわけねーし」
高野くんは全然納得していないようだった。
さっきの光景を見られたんじゃ当たり前か。
高野くんに告白してそんなに経っていないけど、高野くんは今までと何も変わらずに接してくれる。
高野くんも、キヨ君同様優しいんだと思う。
だけど。
大石さんのことを知っちゃったら、きっと傷付くよね。
わたしには本当にどうすることも出来ないのかな。



