「俺が言いたいのは、ライクの方じゃなくて……っ」
キヨ君が呆れたように言いかけたーーその時。
「キヨ! 鈴峰!」
キヨ君の腕の中で、駅ビルから出て来る高野くんの姿が見えた。
わたしは無意識にキヨ君の胸を押し返し、キヨ君から離れる。
その時一瞬だけ見えたのは、眉を下げたキヨ君の悲しげな顔。
な……なんで。
そんな顔を。
「鈴峰、寧々ちゃんと一緒だったんじゃねーの?」
高野くんに聞かれて、ヒヤッとさせられた。
確かに一緒だったけど、本当のことなんて言えるはずがない。
「え? あ……うん。さっきまで一緒だったけど、帰っちゃったよ」
「マジかよ。まさか近くにいたとはな。寧々ちゃんも、連絡してくれたら迎えに行ったのに」
ひとりごとのようにブツブツ言う高野くんに、罪悪感でいっぱいになって行く。



