「花梨ちゃん!」
呆然と立ち尽くすわたしの前に、キヨ君が駆け寄って来るのが見えて我に返った。
「キ、キヨ君……」
なんでここに……?
疑問を感じつつ、右往左往しながらキヨ君を見つめる。
キヨ君はあっという間にわたしの目の前までやって来た。
「はぁはぁ。大石、さんは……?」
トレードマークのゆるふわパーマが乱れて、額には汗が浮かんでいる。
苦しそうに呼吸をするキヨ君は、相当急いでここに来たらしい。
「さっきまで一緒だったけど、帰っちゃったよ」
キヨ君は高野くんと一緒だったんだよね?
それなのに、どうして?
「一緒にいた男は?」
落ち着いて来たのか、次第にキヨ君の呼吸が元に戻って来る。
そして、鋭くわたしを睨み付けた。