「ったく。敵わないなぁ、アンちゃんには」



なんて小声で言いながら、キヨ君は「はぁ」と小さくため息を吐いた。



「はいこれ。花梨ちゃんにあげる。半分こして食べなよ」



キヨ君は持っていたアイスを机の上に置くと、いつも一緒にいる友達のところへ行ってしまった。



「い、いいの、かな?」



キヨ君のふわふわパーマを見つめる。



「いいんじゃない?奴がくれるって言うんだし」



「じゃあ、遠慮なく」



「気が利くじゃん。パキッって半分に割れるのを選ぶなんてさ」



わ、本当だ。


わざわざ半分こ出来るアイスを買ってくれたんだ。



「キヨ君って、さり気なく優しいんだよね」



「愛されてる証拠じゃない?」



意味深にクスッと笑う杏子。


あ、愛されてる?



「そ、そんなわけないじゃん。わたし達はただの友達だよ。キヨ君は心配してくれてるだけなんだから」



そう。


傷心のわたしを心配してくれてるだけ。


そう思うと胸が苦しかったけど、考えないようにしてわたし達はアイスを半分こして食べた。