「俺、傷心に付け込めって言ったけど……本当はそんな風に思ってないから。ただ、あまりにも海斗を心配する花梨ちゃんにイラついて思わず……」
キヨ君がプリントを受け取ったわたしの手をギュッと握る。
鼓動が大きく跳ねた。
「キ、キヨ君……?」
な、なんで手を……?
それに。
ほんとはそんな風に思ってないからって、どういうこと?
わたしが高野くんを心配すると、なんでキヨ君がイラつくの?
うーん、わけがわからない。
どういうこと……?
「今、俺が花梨ちゃんの傷心に付け込んでる。だから、これ以上花梨ちゃんの応援はしないから覚悟しといて」
「えっ……?」
わたしの傷心に付け込んでる……?
覚悟する?
なんの?
わけがわからなくて首を傾げる。
だけど、キヨ君はプイと顔をそらして体を前に向けた。
ますますわけがわからなかったけど、授業が始まってしまったので訊き返すことは出来なかった。