大石さんはなぜか、この時ばかりは笑っていた。
いつも目が笑っていないように見えたのに、今はニッコリ微笑んでいる。
だけどその笑顔はなんだか不気味で。
背筋がゾクッとした。
「高野くんもあたしの顔しか見てないし? っていうか、あたしに言い寄って来る男はみんなそう。すぐ心変わりすると思うから、せいぜい頑張りなよ」
「わ、わたしは別に、そこまでして高野くんとどうにかなりたいわけじゃ……」
「なに良い子ぶってんの? あたしが言うのもなんだけど、綺麗事だけじゃ振り向いてもらえないよ? 男も大嫌いだけど、鈴峰さんみたいな良い子ちゃんも大嫌い」
「……っ」
別に好かれたいとは思わないけど、きっぱり否定されるのは傷付く。
大石さんはどうして、男の人が嫌いだなんて言うんだろう。