「振り向かせたいなら、そういうズル賢さを持つことも大事だろ」
キヨ君が淡々と言う。
わたしには優しいのに、高野くんが傷付くことには何とも思わないのかな?
ズル賢さ……か。
確かに、わたしにそんな頭はない。
感情で行動するタイプだから、いつも先のことを考えずに突っ走ってしまう。
「わたし……高野くんと付き合いたいわけじゃなくて」
振り向かせたいわけでもなくて。
どうしたいのかって聞かれたら、それはそれで困るけど。
高野くんには……心から笑ってて欲しいって思うから。
大石さんと笑い合っていてほしいんだよ。
「今日はもう帰ろっか。花梨ちゃん、家どこ?」
「えっ? あ、高城台駅の近くだよ」
「もう遅いから送るよ」
えっ?
駅に向かって歩き出したキヨ君のあとを、小走りで追いかける。