「ここ目立つし、とりあえず行こっか」



泣いてるわたしの腕を引いて、キヨ君はどこかに向かって歩き出した。


さっきから、すれ違う人達の視線が痛い。


ヒソヒソ言ってる声まで聞こえて来た。



わたしは泣き顔を見られるのが嫌で、うつむきながら歩いた。



「歌いたい気分じゃないかもしれないけど、とりあえず入ろ」



やって来たのは駅前のカラオケ。


わたしの家はここから電車で二駅。


杏子とは乗る電車が真逆だから、遊ぶ時はよくここのカラオケを利用していた。



有無を言わさず中に引っ張られ、キヨ君が受付を済ませる。



部屋に行く間にずいぶんと涙は引いたけど、胸の奥はズキズキ痛いままだった。