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その男とはどれくらい一緒に歩いただろう。
雨がネオン街を幻想的に浮かびあがらせていた。男は周りを窺うようにその中の一軒の前で足を止め、強引に美和をその中へ連れ込もうと強く手を引くと、美和は突然
 「いやっ」
 そういって手を振り解き逃げ出そうとした。
 男は美和の手を更に強く掴み力づくで引き込もうとする。
 外は相変わらず雨が夜景を滲ませていた。
 手を振り解き逃げようとする美和。尚腕に力を入れ離すまいとする男。
 「もう子供じゃないんだからさ。分かって付いて来たんだろ」
 その言葉に美和の体から力が抜けた。そんな美和の肩口に何かがぶつかった。
「おっと。」
美和は両肩を掴まれた。
それは革ジャンを着た美和とそう年も違わない少女だった。
「あぶないじゃんか。そんなにあわてて。前ぐらいみなよ。」
「ゴメンナサイ」
走り出そうとする美和を少女はぐいと抱き寄せ
「おっちゃん。嫌がってる子を無理やりはいかんでしょやっぱ。」
「合意だよ」
「そんな風には見えないんだけど」
「お前には関係ない。つべこべ言わずさっさと行け」
「あっ、そうですか」
振り向きざま男の股間に少女はけりを入れ、美和の手を引くと走り出した。不意をつかれた男は雨の中うずくまっている。
人通りの多いメイン通りに走り出たとき少女は言った。
「いいかい。つらい事あっても無茶するんじゃないよ。話しか聞いてやれないかも知んないけど、それでもよければこのあたりじゃ涼子で通ってからさ一度寄ってきなよ。」
美和はうなずくと解かれた手からすり抜けるように走り出した。