母の喜美恵は泣いて謝るばかりであった。
 
帰宅して間のない美和には寝耳に水の出来事であった。


 どうやら父は話の端々からその女子生徒と一緒に出たというのが美和にも分かった。
恵理子というその子の両親は警察官に促され帰って行った。

次の日警察から連絡が入った。その恵理子という子から母親の携帯にメールが送られて来たというのである。

「今先生と一緒です。先生が悪いんじゃありません。私が勝手に先生に付いて来ただけです。探さないで、そっとして置いてください。」

 そういった内容のメールが届いたという。それを裏付けるように父の後を歩く私服の
恵理子が目撃されていた。家からも自分の着
替えを持ち出しているらしい。美和とは同学
年ではあるが、この4月で恵理子は18にな
っおり自分の意志で出たということで、それ
以上警察での追求、詮索はなくなった。

3
美和は次の朝学校に登校した。普段挨拶を交わす友達達が遠巻きに美和を見ながらこそこそと話をしている。

 教室に入るとさらに美和を避ける態度は露骨で、男子生徒たちは美和に聞こえよがしに、

 「おい知ってるか。美和のおやじ女生徒と駆け落ちしたらしいぜ。」

 「でもそれって自分の娘とやってるみたいなもんじゃん。かなりエロくね~」
 女性たちも同様に

 「うっそ~いったい何考えてんの。もしかしてそれって犯罪ジャン」

 美和は教室にいたたまれなくなり、逃げるように教室を飛び出していた。
 自分でもどこをどう歩いたか定かではない。

ただ今の自分がこれからどうなるのか、父への憎しみ、家庭の崩壊その全てが美和には重すぎた。いや理解できないでいた。考えるいと間さえない突然の出来事。美和自身今自分を取り巻くその全てから逃げ出したかった。