私たちは取り残されて、高木さんと私は目を合わせた。

「あいつ、意外にいいやつだな。睨んでくるから怖いやつかと思ってたけど」

高木さんは、朝比奈が帰ったあとをみてズボンのポケットを両手に突っ込みながら私に言った。

その横顔は、私が見たことのない姿だった。

ただ朝比奈が帰ったあとを見つめて、真顔でいなくなった彼に感謝しているように見えた。

そして、心の中で呟いているようにも見えた。

ありがとうって。

「高木さん。あのー」

高木さんは、うん?と目を見開き私を見てきた。

それは最初に出会った意地悪な彼ではなく、倉田さんから話を聞いた彼だった。

「何?」

「私のこと、本当に好きなんですよね」

私は高木さんに聞いた。
好きって分かっているけど、ちゃんと2人の時に聞きたかった。

「…あーそうだよ。何回も言わせんなよ」

高木さんは照れていた。
頭をかきながら、私を見たり、空を見たり交互に見たり見なかったりを繰り返していた。

「でも、あのベニさんの件で怒ってないんですか?」

「…うん、まあ。少し怒ってた。でも考えたら俺の人生の中でこんな奴現れないと思ったんだ。だから……」

その言葉は、高木さんが言わなくても、大体検討がついた。

ベニとのあの約束は守れなかった。けどあの世で俺のことを見ていて欲しいと。

暗いモヤモヤした空の中、悲しい瞳で空を眺めていた。

私は明るく振る舞い、こう言った。