「はあ…なになに。俺いること忘れてる。しかもなに、これで完結的な告白。俺もいるからね」

朝比奈は、はあとため息を漏らして、彼が履いていた靴元を見てから私と高木さんを交互に目を合わせて口を開いた。

「…俺は波が好きだ。でも、俺じゃダメみたいだな」

下に俯いて彼は悲しい笑顔で微笑んでいた。ただ微笑んでいた。

その姿に私はただ見ていることしか出来なかった。

「朝比奈……」

そう呟くだけで、なにもすることができないと思うとどうしても苦しくなった。

でも、好きな人は一人しかいない。
人間は一人しか愛せないのだ。

「波、そんな悲しい顔しないで」
彼はそう言って、私の涙を右手で拭ってくれた。

大きい手で優しく包むように。
そして、彼はこう言った。

「また、明日学校で会おうな。じゃあ」
なにもなかったようにいつものように笑顔で帰っていた。