私は変人美容師と目を合わせた。
初めて、目を合わせた訳じゃないのに。
だけどその目は、私の気のせいかもしれないが私を愛おしい目で見ている気がした。
私は変人美容師の眼を離すことはできなかった。なぜなら、奥底に悲しい思いがあったとしても、私のことをちゃんと見ていたから。
そして、変人美容師は口を開いた。
「こいつはお前のこと好きじゃないよ。俺のこと好きだよ」
私と目を離して、朝比奈に自信満々に言った。
「…はあ? 波の気持ち聞いてないのになんであんたが答えんの」
ライオンが獲物を捕らえたかのように朝比奈は変人美容師を見て、思ったことを口にした。
「…もうあなたも分かってるはずでしょ。朝比奈さん。俺は池脇さんが好き。そして、池脇さんは俺が好きなんだよ」
当たり前なことだよというように変人美容師は、すんなりとパソコンの文字を打つみたいに言っている。
こんなこと息を吸うみたいに。
チャラい、でも日常生活では絶対に変人美容師は言わない言葉。
こんなに私、震えるくらいに嬉しいなんて。
なぜか私は泣いていた。
「うぅうー」


