倉田さんは、明るいトーンで話を終えて言った。

私たちは、変人美容師と倉田さんで起きた出来事を思うと胸が苦しくなった。

「高木さんが美容院に戻ってきてくれましたけど、それからいつも通りだったんですか?」

私は倉田さんに聞いた。
望は、カバンからハンカチを取り出して涙を拭っていた。

「……そうだね。いつも通り。でもね、二つ変わったね」

「それは?」

倉田さんは、うん?と上目遣いをしていた。
また長い時間座って話をしていて疲れたのか足を組んでいた。

「一つは、笑顔が少なくなくなったことと。二つは、口数が少なくなったことだね」

「笑顔と口数が少なくなった」

私は倉田さんが言った言葉を反復した。

「そう。まず、ベニがいなくなったことで性格がベニと付き合う前の旭になってしまった。感情を表に出さずに相手と話すようになった。あ、でも客の時は違うから。そして、笑顔は作り笑い。ただの営業スマイルだけになっていたよ」

「……」
私は黙った。
だが、望が口を開いた。

「でも、波が来たことで高木さんは一変した。違う?」

「正解!さすが、望ちゃん。そう。旭は、波ちゃんが旭の噂話について文句を言っていた日に久しぶりに作っているんじゃなくて、感情豊かな旭が見られたんだ。あの時、確信した。旭は波ちゃんが必要だって」

「え?」