「ベニ。何してんのー!」
ベニは台所で調理していていたが、料理が不得意なのか焦げたにおいが旭が住むマンションで充満していた。
「だって、旭。私、得意な料理やっと出来たのよ。旭と翔太くんに食べさせたいじゃない?」
旭と俺は、顔を見合わせた。
やっても料理がまずいから
と同じことを思っているだろう。
「……ベニ。やってくれるのは有難いけど。もういいから。俺ら腹減ってないし。やることがあるから」
リビングで椅子に座っていた旭はガタッと立ち上がりベニの所へ行き、頭を撫でて慰めていた。
ベニはゴメンねと言って、両手を揃えて
謝っていた。
「あ、やることってなに?旭、どいて」
旭の手は、まだベニの頭においてあったので、それが邪魔だったのか少しきつめに言い放った。
ざまーみろと俺は心の中で思った。
「はいはい、あ、やることはね。べ二には前に言ったけど、俺ら美容院開業しようと思ってんだ」
冷蔵庫からビールを出して、旭のマイカップであるグラスをゴボゴボと音を出したながらベニに言っていた。
俺はベニが書いたと思われる壁にかけられている絵を眺めていた。
それは旭の横顔だった。
だが、長年旭を見てきた俺にとっては知らない顔。
真剣に右手で本を持ち読んでいると思いきや、ベニのことを意識して中々進んでいない、もどかしさ。
目は真剣な眼差しだが、優しくこちらを向きそうな姿。
旭が俺が見ない間にこんな顔をするなんて、女にとって胸キュンしてしまうのではないか。
そう思いながら、絵を眺めているとベニは楽しそうに旭に話しかけていた。
「いいじゃない! 凄くいい。いいな、私も手伝いたい。看板娘です的な」
「なに言ってんの。ベニは仕事あるでしょ。しかも、今ベニにとって大事な時期なんだから」


