「……ゔーんど、それから旭はね。塞ぎ込んでこの美容院も閉めてしまったの。でも、ある日この美容院の名前をつけた理由の話になったんだ」
*
トントン
「旭。閉じこもってないで出てきなよ。
この美容院、潰れてもいいのかよ」
旭はベニが亡くなって以来、部屋に塞ぎ込んでいる。無理もない。
恋人が亡くなって辛いのは、誰だってきつい。
俺だって。
「……もう、どうでもいい。ベニがいなくなった今、誰からも必要とされていないんだよ」
「なんで、そんなこと言うんだよ。旭は、俺や高校の仲間や専門学校の仲間もいるだろう」
旭の部屋のドアに背中をまかせて、俺は旭に俺が思っていることを言った。
「……そんなの仲間かよ」
旭は、心身消失していた。
だが、俺は旭にだけはちゃんと生きてほしいと思えた。
「……旭、俺な。ベニが亡くなって悲しいよ。俺も旭と同じ気持ちだ。だけど、
この美容院「ベニ」の名前にしたの覚えてる?」
旭は、部屋の中でガタっと物音がした。
何かにぶつかったのだろう。
「……覚えてるよ。そりゃ、ベニの名前だもん」
それは俺たちが専門学校を卒業してすぐのことだった。
俺たちの美容院を作るにあたって、悩んでいた。
まずは場所選びはして、いろいろ手配をしなくてはならない。
だが、その前に美容院の名前を決めたいと俺と旭で話し合ったのだ。


