下に俯いていた顔を望の鋭い目を倉田さんに向けた。
「……いや、違うよ」
倉田さんは望の目を見てから、右に目を向けて考えていた。
「なにが違うんですか?」
望は、まだ鋭い目をして倉田さんを見ていた。
「……望ちゃんには悪いけど……この気持ちはなってみないと分からないよ」
倉田さんは、まだ右側を見ていた。
それは、何を見つめているのか私たちに分からない。
でも、私たちが理解出来ない領域を見ていると思えた。
それを感じた私は口を開いた。
「……分かりました。でも、望の気持ちも分かって下さい」
望は私の方を向いて、私の名前を呼んで目を丸くしていた。
「波」
倉田さんは私を見て、そっかと一言呟き
こう答えた。
「……ありがとう、波ちゃん。望ちゃん、俺言い過ぎたかもしれないけど。この気持ちは俺の胸に閉まっておくよ。ありがとう」
目が見えなくなるくらいに笑顔で私たちに微笑んだ。
こんな時に、微笑まなくてもいいのに。


