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「うん、まあこんな感じでーす。俺の恋の話どうだった? 面白かった?」
倉田さんは明るい声で私たちに言ってきた。
「……」
私たちは、倉田さんの話を聞いて黙り込んだ。
いつもここの美容院来るたび、明るく振舞ってくれる倉田さん。
好きな人が、変人美容師の好きな人だったなんて思いもしなかった。
「黙りこまないでよ。俺は俺なりにあの時、精一杯やったんだ。だから、もう終わったこと」
私と望は離れの部屋でソファに座り、倉田さんと向きあいながら話をしていた。
私は、倉田さんを見た。
それは懐かしく優しい微笑みを浮かべながらも、高校生の時の情景が倉田さんの目に映っているように見えた。
「……倉田さん。私、なんで倉田さんはあの時、ベニさんに言わなかったんですか? 好きって」
望は私の隣にいたが、話を聞き終わった後、下に俯いていた。
だから、相当ショックなのだと思えた。
私は声を発した望を見て、何を言いたいのか分かるように感じた。
「……望ちゃん。さっきも話したように俺はべ二の気持ち分かってて、守ることにしたんだよ。ベニをいつも守れるように」
「守るってなに? 倉田さんの守るは、ただ逃げているんじゃないの」


