*ガチャ

長かった授業も終わり、
一緒に帰った冬華とも別れ
私は家のドアを開けた

「お帰りなさい」
「うん、ただいま‥‥」

数秒の間が開いた後、
私は発狂してしまった。

「って、えー!?!?!?」

自分の目の前にいるのは、
私の大大大好きな
「長谷川 陽斗」くんでは無いですかー!?

「な、なんで‥‥陽斗くんがあ?!」
「詳しくは、おばさんから聞いて」
クールにそして冷静にそう言った
「ふぁ、ふぁい‥‥(は、はい」
私はてんぱりすぎて、かみかみだ‥‥
絶対顔真っ赤だよね‥‥

うん‥‥このミステリアスな瞳、
少しふわふわした黒髪の短髪
完全に「長谷川陽斗」くんだ‥‥。

そして私は大きな声でお母さんを呼び、
事情説明をさせようと試みる。

「陽斗くんは、唯の遠い親戚なのよ」
そんな大変な事をのほほーんとした笑顔で言うお母さん

「へ?!?!」
またもや叫んでしまった
喉枯れちゃうよ‥‥

「なんかあ、お母さんのお父さんの
不倫相手?の間にできた子供?の子供?が
陽斗くんなのよねえ」

「マジでか」
あぜんと口をぽかんと開ける私
てかおじいちゃん不倫してたの?!

「で、一週間前にその事を
おじいちゃんから告白されてえ」

ちょ、いきなりだな‥‥?!

「それで、なんとその子が
人気俳優のあの、
長谷川くんなんていうんだから!
それでなりゆきで唯の演技指導をしてくれる事になったの!」

「そ、そんな!?」
話がトントン進みすぎて
私は思考回路が追いつかない‥‥

「え、演技指導?!」
ついさっきのお母さんの言葉を思い出した
「だって唯、役者になるのが夢なんでしょ?ピッタリじゃない〜」
目をキラキラと輝かせながら
そんな事を言うお母さん‥

「そ、それはそうだけど‥‥」
「い、忙しいでしょ?長谷川さんも‥‥」

一応私は2つ年上の親戚の男の人として
さん付けで呼んでおいた。

「大丈夫だよ、レッスンは夜の撮影がない時に来るから」
無表情で冷静に言う長谷川さん

「と、言うことでえ‥‥
早速今日は明日まで仕事がないらしいからあ、演技レッスンしてもらっちゃいなさい!」
腰に手を当て少しキリッとした表情でお母さんは言った

昔から何言い出すかわからない
超絶天然なお母さんだけど‥‥
まさかこんな事になるなんて‥‥

「じゃ、行こっか、二階」

「そうよねえ、
お母さんがいたら邪魔よねえ‥‥
お母さんは一階でテレビでもみとくからあ」
ごきげんな声でそう言うテンションの高いお母さん

「は、はい!」
見事なびしっとした感じで私はけいれいのポーズをした。
警察か!私は‥‥

そして、この日から
ドキドキが止まらないあんなレッスンが続くなんて、
私は思いも寄らなかったのだった。