しかし、例え佑介だとしても、確実に変なところがあった。何故か、友里香に対して、剣の刃を向けているからだ。
 「……なん、で?」
 そんな状況が把握できずに、友里香はそのことに気付き、状況の整理を始めた。
 佑介は、本当に誰かに操られている。友里香にはそういう風にしか考えられないのだ。通常、パートナーの友里香に対して、佑介は剣を抜き、刃を向けない。仲間なんだから、当然だ。しかし、今は有り得ないことが起きてしまっている。まさに、誰かに操作されてしまっているとしか、友里香には考えられなかったのだ。
 「あの佑介は……やっぱり、佑介なんかじゃなかったんだ」
 そう確信した。が、それから先のことは何も考えてはいなかった。
 このままならば、確実に佑介は友里香に戦闘を挑んでくるだろう。当然、佑介は死ぬ気で友里香を殺そうとするに違いない。今の佑介は殺気が強いからだ。
 それに対して、友里香ができるのは1つ。気絶状態にさせることのみだ。そうすれば、佑介はきっと倒れてくれるに違いない。その間に原因の解明と、佑介を操作している人物を明かさなければ、一生佑介は同じ目に遭ってしまう。
 友里香は槍の先端・大事な人から貰ったキーホルダーが付いたほうを佑介に向け、そのまま走った。
 佑介はその場で跳躍し、身体を回転させた。その技を友里香は知っていた。友里香は速度を保ったまま、佑介が回転したまま、友里香のいる方向へ進んだ。瞬間、友里香は佑介の背後へ瞬間でスライドターンし、跳躍した。佑介が隙を突かれたその間に、友里香は棒の先端を、佑介の頭に思いっきり殴った。
 「はああぁぁっっ!!」
 そして地面に向かって思いっきり叩いた。佑介は重力に逆らうことなく、地面へと落下していった。
 「こんな程度で佑介は死ぬわけがないわよね」
 友里香も地面に着地した。そして倒れている佑介の表情を確かめた。眠っているかのような佑介の表情を見て、友里香は安心した。
 「気絶しているだけね」
 そう判断した友里香は、そのまま佑介を背負って、帰ろうとした。
 瞬間、友里香は激しい眠気に襲われ、その場に倒れた。