本村友里香(髪の毛はセミロングを2つに縛ってある。戦闘服は制服を改造)は、王国独立テロリスト集団「NO ROPE」の(現在の)本拠地・レシノア村の酒場で、今回のミッションの手順が詳細に記された紙とにらめっこをしていた。
 「ふ~ん。報道で騒がれているくせに、そんな大した罠は仕掛けてこないんだ。つまんないの。だから成功率がほぼ100%なのは頷けるね。うんうん」
 と、紙を左手で持ちながら頷いてみせた。
 「何言ってんだよ。成功する可能性が100%に近くても、真剣にやらなきゃいけないだろ?完璧に100%でもないんだし、油断は禁物だぜ」
 「……佑介っ!!」
 椅子に座っている友里香の頭をぽんぽんと叩いているのは、友里香と同じく「NO ROPE」に所属している、友里香のパートナーの鈴下佑介(髪の色は真っ黒。戦闘服はごくごく普通のTシャツの上から青いジャケットを羽織って、スボンの周囲にチェーンが巻いてある)だった。
 「大丈夫よ、そんなの。わたしだってそんなの承知しているわ。『例えどんなミッションでも真剣に、確実に』。じゃないと、いつ失敗するのか、わからないもの」
 「はいはい、肝に銘じるように」
 そう言うと、佑介は友里香と同じ机の椅子に座った。位置は友里香と向かい合うように。そして佑介は机の真ん中に置いてある紙を拾って中身を確かめる。
 「……少佐からの依頼なのか。あの空賊のアジトをね……」
 「そうなのよっ!!今では世間に騒がれている空賊のアジトに潜入して、爆破!なのに、罠なんて無いも同然だし、手応えがなさすぎとか思わない?」
 「……いや、油断してはいけない。もしかしたら隠れた罠だってあるかもしれないだろ?空賊だって馬鹿じゃないんだ。見えるもの全てが真実じゃないのは、友里香もわかってるだろ?」
 「言われてみればそうなのかもしれないけど、そんな罠、大したことはないわ。少佐からの依頼だし、大丈夫!いつも通りに手順を辿ってやれば、文句なしだわ」
 「そうだけど……」
 その時、佑介は微かに眉を顰(ひそ)めたのを、友里香は見ていた。