お姫様は、1人の人間と共に城を脱出しました。

 戦争の最中ですから、帝国軍などがお姫様や人間を襲ったりしたことは何度もありました。

 しかし、人間は何度も何度もお姫様を帝国軍から助けてくれました。銃を向けられて怯えているお姫様を、人間は目の前で薙ぎ払い、倒してくれました。

 いつしか、お姫様はその人間のことを、御伽(おとぎ)噺にでてくる「騎士」の存在に思えてきました。

 それはお姫様がみていた偽物でしかないというのに―――。

 戦争が終わるまで、お姫様は人間に連れてこられた大きな城で、裕福な生活をしていました。
 
 人間はお姫様の言う事には何でも聞いてくれて、欲しいものは買ってもらえて、わがままを言えば、叶えてくれました。

 しかし、戦争が終わった頃、丁度お姫様が4歳になったころでしょうか。

 お姫様は、女王様のもとへ帰りたい、と強く主張するようになりました。

 しかし、何でも叶えてくれた偽りの騎士は、その願いだけは叶えさせてくれませんでした。
 
 気がつけば城に閉じ込められていたお姫様は、城から脱出しようと試みましたが、城を巡回する人間に何度も捕まっては、ふりだしに戻されてしまいます。

 そんな日々が1年も続き―――。

 5歳になったお姫様に異変は訪れました。

 脱出作戦をいつものように試みていましたが……。

 ある日、お姫様は城の中を巡回する人間に暴力し、怒ってしまったその人間が持っていた銃で反抗し、巡回する人間と喧嘩して―――。

 どうしても許せなくなったお姫様は、持っていた銃で―――、

 人を殺しました。