むかしむかし、あるところに1人のお姫様が誕生しました。

 女王様は、お姫様の名前を「アリシェ」と名付けました。

 それからお姫様は、たくさんの人々から愛情をいっぱい受けて育ちました。

 しかし、その頃同時にして東に在る帝国・メゾリークが王国に侵略を開始しました。

 やがては戦争に発展するこの争いを「帝国戦争」と呼ぶのは、あなたも知っていますよね。

 最近のことですから。

 そうして、王国軍は急遽「ガリアード基地」から中佐軍と殲滅隊を、王族がいる「ブライアル城」へ派遣しました。

 王族を最優先で護ることが、国民の誰もが願っていたからです。

 大佐は戦争の最先端で戦っていたため、王族を護ることはできませんでした。

 帝国軍は正面から突入する―――そう考えた中佐軍と殲滅隊は、正面を重視して、いつ敵が潜入してもおかしくないようにしました。

 しかし、帝国軍は正面から潜入しませんでした。

 裏側に通じる通路を渡り、正面の反対から侵入しました。

 中佐軍の一部が通路の出入り口を警備していましたが、すぐに突破されてしまい、侵入を許してしまいました。

 中佐軍は咄嗟に殲滅隊に無線連絡しました。殲滅隊はすぐに、王族がいる「待機室」へ向かいました。

 しかし、そこに王族の人は誰1人いませんでした。

 帝国軍によって、拉致されたのです。

 しかし、1人だけ拉致されていない王族の人間がいました。

 1人のお姫様・アリシェです。

 アリシェだけが城の中でうろついており、そんな中で

 1人の人間と出会いました。

 当時2歳だったアリシェには、誰なのかはわかりません。

 むしろ、好奇心で満たされていました。

 どれだけ馬鹿なのでしょうか。

 その人間は、アリシェを帝国軍から護ってくれました。

 そして人間は、アリシェに向かって微笑んで

 「逃げよう、お姫様」

 と囁いたのです。

 アリシェは城から救出されました。

 拉致された王族の人は、戦争から半年で城に戻ってくることができました。

 しかし、1人のお姫様だけが、城に戻ってくることは―――

 もう、ありませんでした。