恋愛ドクター“KJ”

 「そうガッカリするなって。俺なんてさ、10連敗だぜ、10連敗‥‥」
 駅に向かうスクールバスの中で、一也はアスカを慰めていた。

 自信を持って“ジャンケン・ゲイム”に挑んだアスカだったが、3回連続で負けてのゲイムオーバーとなったのだ。

 「ぜったいにおかしいわよ。ジャンケンで必ず勝つなんてムリよ。
 それにしてもクヤしい。何で私がサルなのよっ!」

 KJが一也とのジャンケン・ゲイムに勝ち続けているのには、何か“トリック”があるに違いないと信じているアスカは、それを証明しようと勝負を挑んだ。3回勝負だ。
 が、結果はあえなく3連敗。
 それはそれで悔しいが、真にアスカをイラつかせるのは「サルに似ている」というKJのセリフだった。
 
 「でもさ、分んないことがあるんだよなあ‥‥」
 ポツリと一也が言った。
 「KJってさ、普段はあんなこと言わないだろ。なんで、さっきは“サル”なんて‥‥。ああ、ごめん」
 KJとは中学時代から仲良しの一也は首をひねるばかりだ。

 「何いってるの。KJってヤツは、もともとイジワルなのよ。普段はいい子ぶって、やさしそうな顔をして、そのくせ人をバカにしてるのよ! 本当にクヤシ~!!」

 過去を‥‥といっても、つい10分か15分前のできごとだが、アスカはKJとのジャンケン・ゲイムでのやり取りを思い返すと、気分もチリヂリとなった。