彼女との出会いは普通じゃなかった。大学の講義でいきなり隣に座ったと思ったら、

「アンタ、ろくな恋愛してないでしょ」

なんてあり得ない。


頭にきたがここは冷静になろうと思い隣を向けば、これまたあり得ないほどの美人がいるんだから、冷静になろうとした努力が水の泡だ。


「何をもってそう思うんだ?」

「アンタのその瞳、すごく哀しそうに見える。特に女に言い寄られてるときなんか見てられない。」


驚いた。彼女と言える存在はいない。以前付き合っていた彼女からの裏切りがトラウマになり、女とは性欲を満たすためだけにカラダを重ねる毎日だ。そんなに露骨に出ていたのか。

「たぶん気づいてるのは私だけ。想像でしかないけど、アンタ、すごい好きだった女に裏切られたんじゃないの?」

「目は口ほどに物を言うって言うからな。見ない顔だけど新手のストーカーかなんか?」

苦笑いしながら彼女に問う。

「ストーカー?バカにしないで。私はアンタのその瞳に惚れたの。そういう弱いところもひっくるめて好きになっちゃったからこうして正攻法でアンタのところに来た。」

そして彼女は続ける。





「私と新しい恋、始めてみない?」





その瞬間、空いていた窓から風が吹いた。たぶんそれは、彼女と俺のはじまりの風。


【完】