センターマイクの君へ(仮)


*********

 夕飯も終わりお酒に酔った兄はトリにベトベトとくっ付きまくっていた。トリはずっと困った顔で苦笑いを浮かべながら酔う兄をあやし寝室へと連れて行った。

 ひとりぼっちになり洗い物がたまっているので洗おうとキッチンに立った。スポンジに洗剤をつけ泡立てているとトリが戻ってきた。


「いいよ、洗わなくて!俺がやるから」

 キッチンに立っているルイを見るとすぐに駆けつけた。でも、ルイはトリの言葉を無視し食器を洗い始めた。
 トリは困った表情を浮かべながらルイの真横に立った。

「俺の仕事なくなるじゃん」
「前は私の仕事だったんだから!お兄ちゃん寝た?」
「寝た寝た…やっとだよ」

 ふーとため息をつくトリに、ルイはクスっと笑う。

「お兄ちゃんトリにベタベタだったねー」
「ほんと、大変だったよ」
「でも、なんか似合ってたよ!」
「何が?」
「…母親っぽい感じだったねってこと」
「………」

 呆れた表情をするトリは手を止めたルイからスポンジを取った。

「あいつの母親は、ルイちゃんのママさんだけで十分だよ。あんな息子、俺には育てられません!!」

 食器を洗いながらトリはクスクス笑いながらそう言い、その後もふたりで兄のことを喋った。
 兄の癖や、行動パターン…締め切り前になると人格が変わる話…。

 そのどれもに笑いあった。