センターマイクの君へ(仮)


「…開花ねぇ…」

 トリの見てる先にはなにがあるんだろう?みんなが笑ってる世界?

「芸人になれるのは一握りなのかもしれない。だけど、その一握りにしがみつくチャンスはあると思うよ…。ここで諦めれば、そのチャンスもなくなるけど…
 お兄ちゃんは必死にペンを握ってた。紙はいっぱい千切ってたけど…ペンだけは放さなかったよ!だから、トリもセンターマイクの前から離れちゃだめだよ」

 海は穏やかに波を打っていた。
 トリはポタっと涙を流すと、ギュっと力強く拳を作った。

「…ありがとう、ぅっ…ルイちゃん」

 男泣きなんて初めて見た。
 男が泣くなんて!って思ってた。だけど、トリの涙は綺麗だった。





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「お兄ちゃん!食べるよー!!」

 今日の夜ご飯は海が見える庭でバーベキューだ。
 リビングのソファーにいる兄を呼ぶと、ダラダラと兄はやってきた。

「…いいね、やっぱ3人って」
「だね。」

 ルイと兄はしみじみとそう言い合うと、肉争奪戦が開始された。
 ふたりでヤレば、バカらしくなることもトリと3人ですれば全てが楽しくなった。


「俺が泣いちゃったこと、ハルには秘密ね!」と、海からの帰り道トリがルイに申し出た。ルイはクスっち笑いながらも「DVD持ってることバラしたのも秘密ね!」と互いに約束しあった。

 2人だけの秘密が、ルイには胸を躍らせていた。