センターマイクの君へ(仮)


「…あるよ。」
「え?」

 トリを面白いと思ったのは、普段のトリもそうだけどそれだけじゃない…

「トリ待ってるとき、お兄ちゃんがトリの出てる漫才のDVD貸してくれたの。2本くらいしか、それには入ってなかったけど…」
「ハルそんなの持ってんの?」

 少し呆れた顔のトリを、ルイはジっと見つめた。

「私、感情が薄いって言われたりするの…先生の冗談にみんなが笑っても私だけは笑わなかったり…するから…。その時は、別に面白いと思わなかったから笑わなかったんだけどね…でも、トリの漫才は笑ったよ。
 正直に言えば、すっごくおもしろかったとは言えないけど、でも面白かったことに変りはないよ。」
 

 兄の作品だって初めのころはありきたりて、テンポもなくて…ダラダラと話を進めていくと締まり悪く終わっていたりした。とてもおもしろいとは思わなかった。
 それでも、作品の中に登場する感情や、言葉はどこかひきつけられるものがあった。作る作品を重ねていくと、どんどん良くなって面白かった。だからきっと、トリもこれから面白い漫才ができると思う。

 そんなことをトリに言うと、トリは兄には才能があったから上手くいったんだと言った。それでもルイは、それならトリにも才能があると言い返した。

「才能はダレにでもあるよ!それを開花させるかさせないかに違いがあるの」