「お疲れ様!コーヒー淹れようか?」

 家の扉をあけた時から、コーヒーの匂いがプンプンしていた。きっと、飲みたくなって用意だけして打ち込んでいたんだろう。
 兄はコーヒーにはうるさく、豆からちゃんと作る。ルイにはそれが面倒で滅多に手を出さない。でも、もう用意出来ているなら淹れるくらいならとキッチンへ足を進めた。

「あぁ~、いいよ…淹れてくれるから」
「へ?淹れて…くれる?」

 兄の言葉に疑問を持ち振り返り首をかしげると後ろから人影を感じた。

「俺がもう淹れたからルイちゃんは座ってなよー」
「え?」

 キッチンから現れたのは、兄と同い年くらいの男だった。
 身長も兄と同じくらい、黒い髪に黒縁の眼鏡…

「お兄ちゃん、誰?この人」

 見たこともない人に警戒心を抱かずにはいられなかった。それに、ニヤニヤしてるし…

「あれ?ルイに言ったろ~。」
「何を?」

床で伸びきる兄に、男はコーヒーを差し出す。

「今日から3人で暮らすって」