センターマイクの君へ(仮)


「こうしてたら落ち着くんだよ。お兄ちゃんが昔してくれたの」

「…ありがとう。」

 穏やかな表情を浮かべるとトリは思い出すように話をした。

「簡単に言えばスベったんだ…。それもダダスベリでさ…」
「ウケなかったの?」
「うん…笑い声なんて聞こえなかった。みーんな同じ顔でさ、早く終われよって顔してた」
「……そうなんだ」
「漫才終わって、ベンチで相方と落ち込んでたら言われたんだ…」
「何を?」

「…向いてないって」


 トリの表情は、すごく悲しそうだった。きっと言われたときはもっと、もっと悲しかっただろう。


「芸人になれるのは一握りだから…お前等はその手の中にはいないって。後輩の方が面白かったし…。あいつ達は手の中にいるんかもな」

 正直ルイには芸人という世界がわからない。テレビもあまりみないせいもあって芸人そのものの存在をあまりしらない。最近になって少しみるようにはなった
 それは学校の友達はダレが面白いだとか、芸人のマネとかをして楽しんでいるからだ。自分もその流れについていかないといけないと見るようになった。