トリはルイの手を止めながらそう尋ねた。
「え?…着るよ…ダメ?」
「ダメじゃ…やっぱ、ダメ!勿体無いよ」
「何が勿体無いの?トリが遅いから時間無駄にしたんだよー!そっちのが勿体無いよ」
トリの手を振り払うとパーカーを羽織、シートに座りこむルイ。
「…待ってたんだ」
驚くトリの言葉は、呟きよりも小さい声だ。でも、ルイはソレを聞き逃さなかった。
「待ってたよ!だって、ひとりで海行ってもつまんないんだから…トリが行くっていうから来たのにさ…仕事だから仕方ないけど…」
プイっと顔を背けると、トリはクスっと笑いながらルイの頭をクシャと撫でた。
「ごめん、待っててくれてありがとう。だから、海入ろう」
「トリのその格好で誘われてもヤだ」
「え?」
「…なんで海にスーツで来るの?」
トリは急いでいたのかスーツ姿だった。その姿に周りの人もジロジロとこっちを見ている。
「あぁ…早く電車に乗ろうと思ってたから、着替える時間なくてさ…」
トリは自分の格好にクスクスっと笑うと持っていたカバンから海パンを取り出した。
「すぐに入れるように、準備万端だろ?」

