トリは今日は仕事で別荘に来ていない。終わったらすぐに行くからと言われルイは別荘には来たがお昼を過ぎてもトリは来なかった。
 海に行ってしまうと、探すのに苦労するからと別荘で待っていたが時間が過ぎもう来ないんだろうと思い出てきてしまった。

 トリはバイトではなく芸人の仕事に行っている。昨日の夜に家を出る予定で荷物まで車に積み込んだのに、携帯が鳴って、電話なのにペコペコしているなと思っていたら「仕事にいかないと」と言い出した。


「電車乗り継いで必ず行くから先に行ってて、明日のお昼くらいにはつくと思うから…」


 急遽決まった仕事に、少し顔が喜んでいたトリ…。芸人が本業のトリには嬉しいことなのはルイにだって分かっていたが、トリがいるから楽しみにしていた別荘行きにトリがいなければ行く意味もないのだ…。

「来れないなら残っておけばよかった」


 口を尖らせ誰かに言うわけでもなく呟いているとトントンと肩を叩かれた。ルイは不機嫌ながらも振り返った。


「ひとり?」