あんなに不機嫌だった顔も、ルイの言葉を聞くと優しい微笑を浮かべた。

「夏休みになったら別荘に行くぞ!三人で」

「別荘…」「別荘?」


 ルイと鳥井はほど同時にそう言った。だがお互いの意味合いは全然違うものだった。
 ルイからすれば、あまり行きたいという訳ではなく乗り気でない感じ。鳥井は、別荘なんてあるの?と少し興奮気味。

「行けるのは8月入ってからだけどな…仕事調整するから」
「別に毎年行かなくたっていいじゃんか…」

 ルイが行きたくないのは別荘と言う場所が楽しい場所ではないからだ。この場所から離れた場所にある別荘…、海は近いがいい点なんてそこだけ。それに兄は部屋に籠もり、海で遊ぶのはルイ一人になってしまう。

「今年はシノブがいるんだからいいだろ?」
「…そんなに行きたいならお兄ちゃんひとりで行ってよ。トリだって迷惑だよ…ね?」

 鳥井に相槌を打つが、鳥井はパァーっと花でも咲いたような顔をしている。

「トリ?」

「別荘なんて凄いねー!一度行ってみたかったんだー!!」
「…だってさ、迷惑じゃないみたいだぞルイ」

 鳥井は別荘に行きたいようだ。こうなったらこの家に一人残るより別荘に行ったほうが楽しいだろう。

「行くよ!行きますー!」