センターマイクの君へ(仮)


「はぁ…」

 ルイの心の中では、なぜか満足した気分だった。零れ落ちたため息は、どっちかというと幸せすぎて漏れてしまったため息だ。顔は常に笑顔を保っている。
 こんなに楽しい時間は久しぶり…、いや初めてに近い。昔は母親とも会話をしていたが、仕事が忙しくなるにつれて話す時間もなくなっていた。
 ご飯は、いつも兄と食べるか、一人で食べるかだった。

「…フフ」

 不意に笑いがこぼれてしまう。こんな日が毎日続くのなら、鳥井が来てくれてよかったと思える。


 トントンとリズムよく足音が聞こえる。それも複数だ…
 ルイはソファーから立ち上がり夕食が用意されたテーブルに行くと指定席にちょこんと座り二人が来るのを待った。

 少ししてまだ眠そうな兄と、鳥井が姿を現す。


「ねみぃ~…」
「寝起きに食事はキツイからハルは別のモノ用意しておいたよ」

 頭をかきむしる兄に鳥井は優しく告げイスを引いて座るように声をかける。
「ほらー、座って!」

 兄が座り、鳥井も兄の隣に座る。
 4人用のテーブルに、3人座ったのはいつ以来だろう…。そんなことだけでもルイには輝いて見えた。

「食べよう~!いただきまーす!」

 鳥井の元気な声につられ、兄とルイもいただきますと言ったあと食事を始めた。