「よかった。名前も連絡先も伺ってなかったので、ちゃんと会えるか心配だったんです」

ホッとした笑みを浮かべる王子。

「改めて。長谷部蒼といいます。理学部の3回生です。本当に昨日はありがとうございました」

「い、いや。そんな深々と頭を下げられること、私はしていないし」

「いえ。あなたが昨日、パンとジュースを分けてくれたおかげで、僕は無事に家に帰れたから」

王子の微笑みが強烈過ぎて、顔が上げられない。

宇高真白21歳。

こんな至近距離でイケメンに見つめられるのは初めてのことで、慣れないよおっ。

「そういえば。あなたの名前は……?」

「ううう、宇高真白ですっ。経営学部の3回生、21歳になりますっ!」

「真白、アンタ緊張しすぎだって」

呆れ半分の朱音のツッコミに気付いてない様子の王子は、「じゃあ、宇高さんは僕と同じ歳ですねぇ」と呑気に笑っている。




「とりあえず、真白。約束してた相手と会えたことだし、私たち行くね」

「あ、うん……」

「あ。お友達と約束していたのなら、ここで食べましょうか」

王子の言葉に、私の側を離れようとしていた朱音たちの動きが止まった。

「え、でも。真白とオムライス食べるんじゃ?」

「はい。オムライス食べますよ」

きょとん、とした顔をする王子。

私たちは顔を見合わせる。



この食堂にはオムライスはなかったはずだけど……?

え、まさかシロの言ってたように、コンビニで買ってきた!?

……んなこと、あるのか?



ひそひそと会話をする私たちを気にする様子もなく、王子は手に持っていた手提げ袋を目の前に掲げた。

「僕の思う、一番美味しいオムライスです。一緒に食べましょう、宇高さん」