蒼くんを迎えに研究室へと進む廊下。
そういえば、半年前にここで、蒼くんが倒れてるのを見掛けたんだなあ。
その場所に立ち止まり、壁に体を預ける。
「廊下で立ち止まってどうしたの? 真白ちゃん」
「蒼くんを拾った日のこと、思い出していたの」
ふふっ。
思わず顔を見合わせて笑ってしまう。
「あの日、私が蒼くん拾わなかったらどうなってたんだろう?」
「警備の人あたりに見つかって、僕は病院送りだったかも」
「そうかもね~。あ、だったら私たち、出会ってなかったのかな?」
人差し指を顎にあて、何やら考えている蒼くん。
「……いや、そうでもないんじゃない?」
「きっと僕たち、どこかで出会った気がするよ」
キラキラ。
目がくらむほどの眩しい王子様スマイルで言われると、なんだかそんな気がしてくる。
「そう、かな?」
「うん、きっと僕は真白ちゃんに拾われていた気がするよ。でも」
「でも?」
「もう、他の男の人は拾ったりしないでね」
「蒼くんこそ。他の人に拾われたりしないでね」
21歳の秋に。
私は大事なものを拾いました。
【Fin】


