藍ちゃんから連絡がきたのは、海野さんと美空さんに会った翌日のことだった。




―― 連絡くれてたのに、返事できなくてごめんね。ちぃちゃんから真白ちゃんに会ったこと聞きました。

会って話したいことがあるので、時間取れないかな?




藍ちゃんからのメールに「もちろん!」と返信をし、次の日に会う約束を取り付けた。




『君があのふたりの心を溶かしてくれるんじゃないかと思ってる』




海野さんの言葉が耳から離れない。

一体、長谷部くんと藍ちゃんは、何を心の中に抱えているのだろう。

そして、私は。

海野さんの言うように、あのふたりの心を溶かすことができるのだろうか……




藍ちゃんから指定された待ち合わせ場所は意外な場所だった。

少し緊張しながら、ドアをノックする。

「はい」

「あ、あの……」

「こんにちは、宇高さん。藍ちゃんから話は聞いています。どうぞ」

柔らかい笑顔を向けてくれた柳澤教授に促されて部屋に入ると、藍ちゃんがソファに腰を掛けていた。




「藍ちゃん、宇高さん見えましたよ」

「ありがとうございます、陽向くん」

ペコリ、頭を下げる藍ちゃんを見て、少し目を細めた柳澤教授。

「お部屋まで借りちゃってすみません」

「いいですよ。他でもない、藍ちゃんのお願いです」

そう言って笑った柳澤教授の視線が、私に向けられる。

「僕は今から出掛けるので、ふたりでゆっくりお話ししてください」

「はい、ありがとうございます」

「では、藍ちゃん。ごゆっくり」

「ありがとうございます」