……そっか。

きっと、美空さんに付き合っている人がいることを長谷部くんは知っていて。

実らない恋をしているから、「彼女は作らない」なんてこの間言っていたんだね。

落ち込んだ私の姿を見て、海野さんは何かを誤解したらしい。

「さっきは千裕が失礼なことを言って申し訳ない」

それをきっかけに、私も我に返る。

「い、いえ。それは全然。それよりも」

「長谷部のこと?」

「はい。連絡しても返事もなくて……。一体、藍ちゃんに何があったんですか? 美空さんがさっき怒っていたことと、関係あるんですか?」



私の言葉に、海野さんは小さく微笑んだ。

「まずはひとつめ。長谷部からのメールの返事がなかったのは、彼女が少し体調を崩して入院していたからだ」

「入院!?」

「今は退院して、自宅療養している。そして間の悪いことに、長谷部の携帯は今、修理に出ていて返事が出来ない。だから、君のメールに返事をしようとしていない、じゃなくて、出来ないんだよ」

その言葉に、ホッとする。

よかった、私、藍ちゃんに嫌われちゃったわけじゃないんだ。




「そしてふたつめ。千裕が君に怒った理由は、君と別れた後に、長谷部が電車の中で少し嫌な思いをしたからだ」

「それが原因で、藍、入院したの……」

震えるような美空さんの声。

そんな美空さんをなぐさめるように、海野さんが肩を軽くたたく。