そんなことならお安い御用だ。

長谷部くんの困りごとが、私に解決できる。

「それなら、私が付き合うよ」

「宇高さんが?」

「うん。私、今日のバイトは夜からだし、今からなら時間作れるよ」

「いいの?」

私がコクリ、頷くと、長谷部くんが笑顔になる。

「よかった。実はね、抜けるのも難しかったんだ。助かる」

こうして私は、藍ちゃんが待つ待ち合わせ場所へと急いで向かったのだった。




「真白ちゃん、今日はホントにありがとう」

用事を終えて、藍ちゃんが頭を下げる。




藍ちゃんの用事、というのは、図書館へ資料を取りに行くことだった。

私たちが普段住んでいるところから電車で30分ほど揺られた先にある図書館。

正直、藍ちゃんひとりで行ける場所だろう、と心の中で軽く突っ込んだけれど。

思えば藍ちゃんって、ひとりで行動しているイメージないんだよなあ。

出掛ける時は、いつも長谷部くんか美空さんが一緒に行ってるって感じ。




もしかしたら藍ちゃん、極度の方向音痴なのかも。

それで、誰か付き添いがいないと絶対に目的地にたどり着けないんだ!

なんて、私は勝手に藍ちゃんを方向音痴に仕立て上げて、ひとりで動かない理由を勝手に作り上げていた。