「宇高さん?」
ポン、と肩を叩かれ振り返ると。
いつもと変わらない笑顔で、長谷部くんが微笑んだ。
あのショッピングモールでの偶然の出会いから、まだ2日しかたっていない。
普段は絶対に約束しないと会うことがないのに。
なんでこんな日に限って偶然出くわすのだろう。
大学の図書館。
滅多に来ない場所だけど、今日は珍しくレポートに必要な本を探しに来ていた。
「……長谷部くんはよく来るの? 図書館」
「時々ね。宇高さんは?」
「私はまったく。今日はたまたま探し物があって」
「そっか」
少しだけ心がざわつく私とは反対に、長谷部くんは相変わらずのマイペース。
棚に目線を戻している長谷部くんの横顔を、こっそりと盗み見る。
相変わらずの整った顔。
優しそうな瞳。
あぁ、なんだって私は、こんな王子様みたいな人に恋しちゃったんだろう。
「そういえば」
「!? ん、何!?」
突然交わった視線に動揺する。
「あの後、何してた?」
「あの後って?」
「……僕とショッピングモールであった後。デートだったんでしょ?」
「えっ!? 違う違う! クロは友達で、彼氏とかじゃないからっ!!!」
長谷部くんに勘違いされたらたまらない!
顔の前で手をブンブンと横に振り、思いっきり否定する。