「真白、どうした?」

耳元でクロが囁くけれど、私は動くことが出来ない。

「ごめんね、ちぃちゃん。急に呼び出したりして」

「この借りは高いぞ~、なんちゃって。冗談よ。私も藍と買い物したかったし、ちょうどよかったわ」

「ならいいんだけど」

微笑みあう長谷部くんとちぃちゃんの姿は、とても画になっている。

横に並ぶ姿がとても自然で、胸が苦しい。




「じゃあ、僕行くね。ちぃちゃん、藍ちゃんのことよろしく」

「了解。任せて」

「行ってらっしゃい」

仲良く手を振る藍ちゃんとちぃちゃん。

「宇高さんも、楽しい休日を」

「う、うん。ありがと……」

せっかく長谷部くんに声を掛けてもらったのに、私は小さく声を出すことしか出来なかった。




「ちぃちゃん。この子が真白ちゃん」

「ああ、蒼くんと藍の恩人の」

ふわり、と微笑んだちぃちゃんは、私に向かって頭を下げた。

「初めまして。美空千裕です。藍からあなたの話はよく聞いているわ」

「……え? 私の?」

「『真白ちゃんはいつも元気で笑顔が可愛い』って。ね?」

「うんっ! それに、いつも私の作ったお弁当も美味しそうに食べてくれるから嬉しいの」

「何よ。私だっていつも藍の手料理楽しみにしているわよ?」

ちょっと妬けちゃうじゃない。

そう言って頬を膨らます美空さんは、とてもキレイで可愛くて。

私には眩しかった……。




藍ちゃんと美空さんが連れだった後。

「……ろ、真白っ!」

どうやらぼんやりとしていたらしく、クロが軽く肩を叩いていた。

「……ごめん、クロ。今日はもう帰るね」

「え!?」

「せっかく誘ってくれたのにごめん。埋め合わせはまたするから」

「真白っ!?」