「ごめんなさい。今急いでいるので……」
「いいじゃん、少しくらい」
「いえ、人と会う約束もあるし」
どうやら女の子は2人組の男の子にナンパされているみたい。
どうにか断ろうとしているようだけど、2人組の押しが強いらしく、どうにもこうにも動いてくれないようだ。
今にも泣きだしそうになっている彼女。
このまま通り過ぎるわけにはいかない!
そう心に決めた私は、3人に近づいた。
「ごめん、お待たせ!」
「え!?」
「すみません。私この子と約束してて。今から用事があるんです。ね!?」
私の勢いに押されたのか、こくり、と頷く女の子。
「用事なんかほっておいて、俺たちと遊ぼうよ」
「そうそう。俺たちもふたり、君たちもふたり、ちょうどいいじゃん」
何度か押し問答を繰り返しても、まったくもって聞く耳を持ってくれない2人組。
いい加減、私の堪忍袋の緒が切れそうになった瞬間。
女の子の顔がキラキラと輝いた。
「蒼くんっ!!」
振り返ると、そこには私が今一番会いたかった人の姿。
息を切らしてこっちへ向かってくる長谷部くんを見た2人組の顔色が変わったのが見えた。
「え、長谷部の知り合い?」
「マジかよ。それじゃあ俺たち勝ち目ねぇじゃん」
ブツブツとつぶやく彼らと私たちの間に入った長谷部くんは、2人組に冷たい視線を向けた。
「この子に何か用ですか?」
「……いや、何でもない。です」
と、言い終わらないうちに、ふたりはどこかへ消えていった。