食堂の片隅で、私は王子こと、長谷部蒼くんとふたり、テーブルに座っていた。

「一緒にどうですか?」

長谷部くんのお誘いの言葉に、なぜか朱音とシロは遠慮して。

「いやいや、ここは真白とふたり、オムライス食べてて!」

「じゃな、真白。また今度な」

「ええー、オレ真白と飯行きたかった~!」

ひとりわめくクロの首ねっこをつかんで、食堂から消えてしまったのだ。

そして私は、緊張で心臓が破裂しそうになりながらも、長谷部くんとテーブルをはさんで正面に座っている。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、長谷部くんはいそいそと手提げ袋からお弁当箱をふたつ取り出した。




「じゃーん」

効果音と共に、蓋を開ける長谷部くん。




「う、わあ……!」

思わず感嘆の声を上げてしまった。

お弁当箱に詰められていたのは、それはキレイな形をしたオムライス。

見た目は本当に、2丁目の洋食屋さんのそれと遜色がない。

「美味しそ~っ!」

「美味しそう、じゃなくて、本当に美味しいから。はい、どうぞ」

長谷部くんが差し出してくれたスプーンを受け取って、オムライスを一口。

「長谷部くんっ! これ、私の大好きなヤツ~っ!!!」

卵のふわふわ具合も、キチンライスのケチャップの絡み具合も、完璧に私の大好きなオムライス!

「どうしよ。他のオムライスが食べられなくなるくらい私の好みドンピシャなんだけど!」

朱音が側に居たならば、

「真白。食べるか喋るかどっちかにして」

って怒られそうなところだけど、長谷部くんはニコニコ笑みを絶やさず見守ってくれている。