「もおっ。なんで教室に忘れちゃったんだろう!」

忘れ物をした自分に苛立ちながら、無駄に広い大学構内を走り抜けていく。




事の始まりは少し前。

「あれ?」

「どうしたの、真白(ましろ)」

「ない。スマホがない……」

「え? ちゃんと探した?」

「うん、カバンの中も漁ったけど見つからないよお~っ! どうしよう、朱音(あかね)っ!!」

頭を抱える私の横で、朱音が自分のスマホを手に取る。

「真白の電話に掛けてみるよ。もしかしたら誰か拾ってくれているかも知れないし」

朱音からのコールに誰かが出てくれることを願いつつ、数秒。

「……もしもしっ。はい、持ち主の友達です……、はい、わかりました。ありがとうございます!」

「どうだった!?」

「さっきの授業の教室に忘れてたみたいよ。先生が拾得物の管理室に持って行ってくれたって」

「よかったぁ」

「ただね」

「ただ、何!?」

「その管理室って、今私たちがいる場所から対極の場所にあるのよね。アンタ、バイトの時間もうすぐじゃなかった?」




朱音に言われて、急いで腕時計を見る。

ヤバイ。超特急で管理室に取りに行ってバイトに行かなきゃ遅れちゃう!

「とにかく急いで取りに行っておいで」

「わかった! ありがと、朱音。また明日ね」

「うん、じゃあね~」