「成羽がどんなに優しいか知ってる?
人の事で泣いて、自分のことでは強がって絶対泣かない子なんだよ!

成羽はさ、悪いことした時には真剣に怒ってくれて本当に優しいんだよ。
そーゆー時、キレはしないけど友達のことでキレたら誰にもとめられないんだ。
それくらい友達思いなんだよ!」


成羽はすっごい優しい子なんだよ。
成羽はいい子なんだよ。


「成羽はね、私が殴られてボコボコになったとき
助けてくれたの。
自分も怖くて震えていたのに助けてくれたの。
自分よりも友達を優先してくれたの!」


あんないい子いないよ。


「そのあと、私をおんぶして保健室まで連れてってくれたんだよ。
途中で階段から落ちて足の骨が折れたのに。
それでも、私に怪我はないかって心配してくれたの!」


先輩は黙って聞いている。


「成羽はすごくいい子なんだよ?
今だって松葉杖ついたら私が心配するって
思ったから折れてる足を痛いのに
床につけて普通に歩いてるんだよ。」


いい子だよね。ほんとに。

「成羽のお母さんから聞いたけど、
このまま歩いてるとなおるの遅くなるって
言われたのに、泣きながら
私に心配かけたくないからってお願いしてきたんだって。」


ごめんね。


「先輩はこんないい子ほっとくの?」


「成羽が優しいのは知ってるはずだった。
でも、俺は成羽の何も知らなかった。」

先輩はすごく悲しそうな目をしていた。

「先輩。男ならしっかりしろ!
振るなら振れ!告るなら告れ!
私は先輩を信じてますから」

それだけ言って成羽のもとに帰っていった。