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現在の私は、家から徒歩で四十分歩いた所の学校に通う極普通の女子高校生である。
何時もの様に見慣れた通学路を音楽を聞き、欠伸をしながら歩く。
来年の進学に向け、後になって困らない様に今から勉強を、進学先はそこそこのお金が掛かるのでバイトもしながらの日々。なかなか睡眠時間がとれない日が続いていた。
ふわっと頬を撫でる様な風、花の匂いが鼻に届く。
『(春だな……)』
しみじみとそんな事を思いながら一日が始まる。
四十分後……
──犀鉗高校(セイカン)
私の教室は二年一組。
一組は進学クラスであり、他のクラスよりもレベルの高い授業をしている。
まだ本格的には始まっていないが付いて行けるのか、正直不安である。
一年の時は学年順位三位位内には必ず入っていた。
でも学年が上がると授業の内容も難しく濃くなる。それは承知の上なのだが……
『碧おはよう。……何朝から浮かない顔して……何か悩み事?』
『 あっ桃薫……おはよう。……悩みって事でも無いんだけど……』
私に挨拶をしたのは同じクラスの菖蒲桃薫(アヤメモモカ)。おしとやかな女の子である。
『私で良かったら聞くよ?……あ、もしかして人間関係?』
『そんなに重い話じゃないよ。……進学出来るのかって不安でさ。』
『碧だったら大丈夫だよ。今からコツコツ努力すれば……って、碧はもうコツコツ努力してるよね……。』
私の唯一の長所はコツコツと努力し最後まで諦めないと言う事。祖母に何時もそう言われてきたからだ。
『でもこれから益々努力しないとね。』
『そうだね、一緒に頑張ろうね。』
朝からこんな話をしている。
友人と話をすると時間を忘れてしまう。
あっという間に朝のホームルームが始まった。
