『碧ちゃん、今日も行くかい?』

その問い掛けに、私は大きく頷いた。
祖母と私の間で日課になっている散歩。外の暖かな日差しを浴びながらの散歩はとても気持ち良かったのを覚えている。道端には小さな花が自分を主張する様に必死に生きている。蝶が綺麗に舞う。私はとにかく色々な所に目を向けていた。

散歩の時間は大体三十分程度。他の子と比べて少し体の弱かった私の為に祖母がコースを考えてくれたのだ。





家から大体十五分くらい歩いた所に、茶色の古びた橋がある。下には綺麗な川が下の方まで続いていた。

その橋を渡ると、先程の明るさとは違い少し暗くなっており、生い茂っている木も深緑に近い色に見えた。
その先には、大きな赤い鳥居がある。
所々塗装が剥がれているが傍から見たら立派な鳥居だ。
それをくぐり抜けると石の階段が二十段あり、私はすぐ上まで登った。後から来る祖母を階段の一番上に座って待っていた。

『おばあちゃん早く早く!』

時にはそんな事も言っていた。

『碧ちゃん、これ置いてきてくれるかい?』

祖母から渡されたのは油揚げと生卵。
これを置くのが私の散歩の目的なのだった。