声をかけようとして、俺は気づいた

「………なんで、濡れてないんだ?」

建物の屋根を大きな音を立てて激しく降り続ける雨

それなのに男の子は全く濡れた様子がない。
というより、雨の方から彼を避けているようにさえみえた。

「………また、か」

明らかに普通ではないそれに、俺は恐怖は覚えず、どこか納得さえしてしまった。

……この子もイレギュラーなんだな

なんて、呑気に考えるくらいだ。

というのも俺は一般的に言う“霊感”なるものがあるらしく、幼い頃から人ならざるモノの姿を何度も目にしていたのだ。

ガキの頃はそれが当たり前で、普通のことだと思い込んでいた。

それが異常であると気づいたのは親友だと思っていた野郎に「気持ち悪い」と言われ、拒絶された時だ。

それから俺はこのことを家族以外に話すことをやめた。

個性、なんて言葉で片付かないことくらいわかっている。
俺は普通ではない日常にとっくに慣れていた。