絶対ダメな恋 〜偏見の世の中を生き抜いて〜上

「はじめはチキンライスを作るんだ。よーく見てろ!」

教師になって初の体育以外の授業。


しかも家庭科。


横で一瀬がニヤニヤしていた。


「先生のエプロン姿…面白い…!」


「かっこいいって?わかってるから、一瀬は鶏肉を切ってくれ。小さくな!」


一瀬はエプロンが似合うな…。


俺は鶏肉を切る一瀬を気にしつつ玉ねぎを切る。


「先生ーこんな感じ?」

切った鶏肉を見せる一瀬。

無邪気に、かわいい笑顔で。


「お!いい感じ!うまいな一瀬。いつでもお嫁に行けるな…」

あ……しまった…。

「あ…いや…ごめん…」

一瀬の顔にはさっきの笑顔はなかった。


「あやまらないで……そのまま冗談で終わらしてよかったのに…。」


そう言うと一瀬は、再び鶏肉を切りだした。


……俺…バカだな…。


一瀬を傷つけてしまった…。


傷だらけの心に、また傷を…。


涙が出てくる。


よかった……。


今は玉ねぎのせいにできる…。


ごめんな…一瀬。