ユウウコララマハイル

「天使なんかいるわけねえじゃん」


背中に羽なんか生えていないし、そもそも曾祖父の手記に「天使」という言葉は一度も書かれていない。
“背中に羽が生えた幸運を運ぶ者”という記述はあったけれど、それが本人だとは断定できない。
書いてある内容は妻である曾祖母と暮らしていた短い時間の出来事がほとんどで、いかに妻と娘を愛しているかという、それが訥々と書いてあるだけだ。


愛情たっぷりで産まれた祖母。
それも充分に伝わってくる。
やはりそれも、自分とは大違いだ。
自分は両親と縁がない。


「なんだか、生きていることが悲しくなってきた」


足を伸ばせない浴槽だけれど、湯が溢れるのを厭わずカケルは身を小さくして頭まで潜った。
そこで数秒動きを止め―――――乱暴に浴室のドアが開いた。


「さっきから呼んでるのになにしてんの!」


なぜ俺は怒られているんだろう?